診療内容
保険取扱疾患 血管性疾患
毛細血管奇形(単純性血管腫)(赤あざ)
治療の回数
レーザー治療を行います。
3ヵ月間隔で、5~10回程度の治療を行います。
レーザー治療により改善しますが、色が薄くなってくるとレーザーは反応しにくくなり、色が残る場合があります。
治療により完治する(色が完全に消える)割合は、3割程度と言われており、残存する場合に、10回を超えて治療することもあります。
ただし、治療回数が増えると、反応しない血管のみが残っている状態となり、治療しても変化が少なくなります。
その場合も、治療を中断するのではなく、間隔を開けて、1年に1回など、治療を継続することをお勧めします。
血管は、常に作り替えられていて、間隔を置くと、反応する血管が出てきます。
年齢の変化による血管の拡張による変化(色が濃くなること、隆起すること)を予防することができます。
治療の機器
パルス色素レーザー(英語で、ダイレーザー)が使用されます。
色々な機種がありますが、シネロン・キャンデラ社のVビームレーザー(商品名)という機種が、安全で強い治療ができます。
パルス色素レーザーは、照射すると熱を発生し、熱傷となってしまうことがあります。
かさぶたや水ぶくれができたり、ひどい場合には、やけどの傷あとを残すことがあります。
Vビームレーザーには、熱傷を予防するダイナミッククーリングデバイス(DCD)という仕組みがあり、レーザー照射前に、照射部位に、冷却ガスを正確に噴霧し、皮膚の表面の温度を下げて、熱傷を予防します。
冷やしすぎると、治療の効果も減弱してしまうため、正確な量の噴霧が重要になります。
安全に照射できるだけでなく、その分、従来より強い出力で、照射することができます。
高い効果が期待できます。
また、冷やすことは痛みの減弱にも効果があります。
従来のパルス色素レーザーは、波長585nmのものが多いですが、Vビームレーザーは、波長595nmを採用していて、より深達性が高い(皮膚の深くまで効果がある)照射ができます。
Vビームレーザーには、発売順に、Vビーム、VビームII(パーフェクタ)、Vビーム ビスタの3機種があります。Vビーム ビスタが、最後に発売された機種ですが、現在は製造中止、販売中止(理由は発表されていません)となっていています。
現在の発売機種は、VビームIIです。
発売当初のVビームIIは、赤い筐体でしたが、現在のものは、白い筐体です。
何れの機種も同様のダイナミッククーリングデバイス(DCD)が装備されています。
レーザーのはたらき方
レーザーは色に反応します。
特定の色に反応し、色のある部分のみを破壊します。
シミや黒あざ、茶あざ、青あざは、ターゲット自体に色がありますが、赤あざのターゲットである血管は赤くありません。
赤あざのレーザーは、血管内を流れる赤血球の中の赤いヘモグロビンという色素に反応します。
ヘモグロビンで先に熱が発生し、その熱が周囲の血管に伝わり、血管を破壊します。
細い血管には、少量のヘモグロビンしかないので、反応が弱く、破壊できません。
このことが、赤あざのレーザー治療の完治する割合が低いことの原因です。
反応しにくい血管は、太くて丈夫な血管ではなく、細い血管です。
健康保険による治療
Vビームレーザーによる治療は、健康保険の適応があります。
面積により、3割のご負担額で、6,510円~32,550円です。
乳幼児医療証、子ども医療証も使えますので、日頃の医療費が無料であれば、無料で治療できます。
治療面積に上限があり、181cm2以上は、一律、3割負担額は、32,550円です。
上限面積以上は、保険で治療できないという意味ではなく、どんなに広い面積も保険で治療でき、3割負担額は、32,550円という意味です。
保険の料金は、3ヵ月ごとの料金で、その間で分割することも可能です。
広い面積の場合、分割して、半分ずつ1ヵ月半ごとに治療することも可能です。
前半の治療の際に、全額の支払いが必要ですが、後半の治療の際に、料金は発生しません。
同じ部位に、1ヵ月半ごと2回治療することも可能です。
皮膚に負担がかかるので、あまりお勧めはしませんが、治療後の色素沈着等のない良い状態であれば、治療可能です。2回目の治療の際は、治療費は発生しません。
毛細血管奇形(単純性血管腫)のレーザー治療には、治療回数の制限はありません。
消失するまで、何回でも照射することが可能です。
成長による過形成(肥大)
成長に従い、赤あざのある部分の骨、軟部組織が、過形成となる(肥大する)ことがあります。
広範囲に赤あざがある場合に、生じます。
具体的には、顔面の半側に赤あざが広範囲にある場合、顔面の大きさに左右差を生じることがあります。
赤あざのある側だけが、大きくなります。
脚に赤あざが広範囲にある場合に、脚長が長くなったり、脚の太さが太くなったりします。
徐々に変化するので、機能的な問題が生じることは稀ですが、整容的に気にされる場合があり、手術を行うこともあります。
成長による血管の隆起
年齢の変化により、40~50歳くらいになると、血管の壁は弱く薄くなり、血管が太くなります。
正常の血管にも見られる現象ですが、赤あざの部分でも見られ、色は紫色に近い濃い色に変化し、隆起して来ることがあります。
この状態は、レーザー治療で改善することができます。
レーザーは、色に反応するので、色が濃い方が強く反応します。また、血管の壁は、弱く薄くなっているので、効果が出やすくなっています。
正中部母斑、サーモンパッチ(顔面)、ウンナ母斑(後頚部)
顔面の中央(おでこの中央、鼻の中央、鼻の下の中央)、上眼瞼(まぶた)の内側1/3、後頚部の中央に存在する平坦な赤いあざです。
通常の毛細血管奇形(単純性血管腫)と異なり、自然消退することがあります。
色が薄くなってきている場合は経過を見ます。
変化が少ない場合は、最終的に消退せず残存することがあるので、積極的にレーザー治療をする場合があります。
スタージ・ウェーバー症候群
顔面片側の広い範囲のあざは、同じ側の脳内に石灰化、血管病変を伴うことがあり、神経症状や緑内障を発症することがあります。
顔面片側の広い範囲にあざを認める場合は、頭蓋内の精査が必要です。
また、眼科受診が必要となることがあります。
クリッペル・トレノーネイ・ウェーバー症候群
クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群は、四肢片側の広範囲に混合型脈管奇形(毛細血管奇形、静脈奇形、動脈奇形、動静脈奇形、動静脈瘻、リンパ管奇形を含む)を認める疾患です。
四肢片側の広範囲に及ぶ毛細血管奇形(単純性血管腫)は、思春期以降に、結節形成や静脈瘤を形成することがあります。
同側の肢の肥大と延長を認める場合があります。
整形外科受診が必要となることがあります。
ロングパルス YAG レーザーによる治療
Vビームレーザーによる治療で、効果の出ないものに対して、ロングパルスYAGレーザー(キャンデラ GentleMax Pro Plus)による治療を行っています。
一般的な治療法ではありません。
Vビームレーザーが、第1選択で、健康保険の適応もあります。
可能な限り、Vビームレーザーによる治療の継続をお勧めしています。
ただし、Vビームレーザーによる治療を、繰り返し行っても、治療に抵抗性があり(効果が出ない)、残存してしまう場合があります。
Vビームレーザー抵抗性の血管性疾患に対するもう1つの選択肢として、ロングパルス YAG レーザーによる治療が有用な場合があります。
Vビームレーザーより深達性(より皮膚の深くまで効果がある。)があり、より太い血管にも反応します。
Vビームレーザーで効果が出ないものに、改善を認める場合があります。
深達性が高いと、そのために、傷あとを生じる可能性も高いので、慎重な照射が必要です。
テスト照射から始めて、効果が認められる場合のみ、継続します。
原則は、Vビームレーザーによる治療の継続をお勧めしています。
テスト治療により、副作用がなく、効果を認める場合のみ、ロングパルスYAGレーザーによる治療を行います。
ロングパルスYAGレーザーの照射径は小さいため、広範囲の治療はできません。
充分なVビームレーザーによる治療を行った場合に限り、ロングパルスYAGレーザーによるテスト治療を無料でお受けしています。ご相談ください。
- ■主に使用するレーザー装置
- 「Vビームレーザー」キャンデラ VビームII(保険適応があります。)
- ■平均的な治療回数
- 5~10回程度、またはそれ以上
- ■治療間隔
- 3ヵ月ごと
- ■治療料金
- 治療料金一覧へのリンク