血管腫(老人性血管腫)
けっかんしゅ(ろうじんせいけっかんしゅ)
血管腫は、1~3mm程度の大きさの平坦もしくはやや隆起のある赤いできものです。毛細血管の増殖によってできる皮膚の良性腫瘍です。無症状ですが、消失することはなく、加齢に伴い増えていきます。レーザー治療により、改善することができます。
- ■主に使用するレーザー装置
- 「Vビームレーザー」キャンデラ VビームII
- ■平均的な治療回数
- 1~3回程度
- ■治療間隔
- 2ヵ月ごと
- ■治療料金
- 治療料金一覧へのリンク
ケロイド、肥厚性瘢痕
ひこうせいはんこん
皮膚は、外傷、熱傷、手術等により傷つくと、瘢痕(傷あと)となります。
瘢痕は、3つに分類されます。
「瘢痕」、「肥厚性瘢痕」、「ケロイド」の3つです。
「瘢痕」の質感の違いは、「フラクショナル CO2(炭酸ガス)レーザー」による治療が可能です。
* 「外傷・熱傷による瘢痕」を、ご参照ください。
「肥厚性瘢痕」、「ケロイド」の赤みは、「Vビームレーザー」による治療が可能です。
「瘢痕」
単に「瘢痕」というときは、質感は、正常皮膚と異なり、テカテカした感じですが、色は肌色で、隆起がなく平坦なものを指します。
「肥厚性瘢痕」
「肥厚性瘢痕」は、赤く隆起した瘢痕です。
手術の傷あとなどに生じます。
通常、経過は長いですが、1~2年経過を見ると改善し、肌色、平坦に戻ります。
「ケロイド(真性ケロイド)」
「ケロイド」は、傷跡に生じる拡大性、難治性の赤い隆起です。
元の傷の範囲を超えて拡大するのが特徴です。
前胸部、肩、上腕、耳垂(耳たぶ、ピアス後)下顎、下腹部(帝王切開後)などに生じます。
手術の傷あとなどに生じることもありますが、気づかない虫刺されなどから生じて、拡大して大きくなることがあります。
拡大方向に赤みが生じ、元の部分は赤みが収まります。
難治性で完治の難しい状態です。
広範囲に拡大することがあります。
体質によって生じます。
一般用語としての「ケロイド」は、傷が目立つものを広く指す言葉ですが、医学用語としての「ケロイド」は、上記に記したもののみを指すため、区別するために医学用語の「ケロイド」は、「真性ケロイド」と呼ばれることがあります。
「瘢痕」の治療
瘢痕の質感の違いは、フラクショナル CO2(炭酸ガス)レーザーによる治療が可能です。
* 「外傷・熱傷による瘢痕」を、ご参照ください。
「肥厚性瘢痕」、「ケロイド」の治療
1.内服治療
トラニラスト(リザベン®)という抗アレルギー剤が、肥厚性瘢痕、ケロイドに対して効果があります。
肥厚性瘢痕、ケロイドの中の炎症細胞が出す化学伝達物質を抑制するはたらきがあります。
2.圧迫療法
テープやシリコンシートなどにより肥厚性瘢痕、ケロイドを圧迫、固定します。
3.ステロイド外用、局所注入療法
抗炎症作用のあるステロイドが、肥厚性瘢痕、ケロイドの改善に作用します。
軟膏で塗る方法、薬剤の付いたテープを貼付する方法、薬剤を局所に注射で注入する方法などがあります。
特に、トリアムシノロンアセトニド(ケナコルト®)という注射剤が効果があります。
隆起を平坦化する効果があります。
4.パリン類似物質外用療法
ヘパリン類似物質(ヒルドイド®)という保湿剤として使用される外用剤が、肥厚性瘢痕、ケロイドにも効果があります。
ヘパリン類似物質には、「繊維芽細胞増殖抑制作用」というはたらきがあります。
「線維芽細胞」は、コラーゲンやヒアルロン酸を作り出す細胞です。
肥厚性瘢痕、ケロイドでは、コラーゲンが、過剰増殖して、隆起の原因となっています。
ヘパリン類似物質は、「線維芽細胞」の増殖を抑制し、コラーゲンの過剰増殖を抑制します。
5.赤みに対するVビームレーザーによる治療
血管に作用するVビームレーザーを照射することで、肥厚性瘢痕、ケロイドの赤みを改善することができます。
肥厚性瘢痕、ケロイド内の血管を破壊することで、赤みを改善します。
隆起に対しては効果がありませんので、ケナコルト®の注射等により、平坦化させた後にレーザー照射することをお勧めします。
レーザー治療以外は保険診療が可能ですが、レーザー治療は自費診療となります。
保険診療と自費診療を同時に行う混合診療は禁止されているため、レーザー治療を自費診療で行う場合、レーザー治療以外の診療も自費扱いとなりますので、ご注意下さい。
「瘢痕」の質感の違いは、「フラクショナル CO2(炭酸ガス)レーザー」による治療が可能です。
* 「外傷・熱傷による瘢痕」を、ご参照ください。
「肥厚性瘢痕」、「ケロイド」の赤みは、「Vビームレーザー」による治療が可能です。
- ■主に使用するレーザー装置
- 「Vビームレーザー」キャンデラ VビームII
- ■平均的な治療回数
- 3~5回程度、またはそれ以上
- ■治療間隔
- 2ヵ月ごと
- ■治療料金
- 治療料金一覧へのリンク
Vビーム抵抗性の血管性疾患 ロングパスル YAG レーザーによる治療
ていこうせいのけっかんせいしっかん
毛細血管奇形(単純性血管腫)(赤あざ)、乳児血管腫(いちご状血管腫)(赤あざ)、毛細血管拡張症の治療は、Vビームレーザーが、第1選択で、健康保険の適応があります。可能な限り、Vビームレーザーによる治療の継続をお勧めしていますが、治療に抵抗性があり、残存してしまう場合があります。Vビームレーザー抵抗性の血管性疾患に対する第2選択として、ロングパルス YAG レーザーによる治療が有用な場合があります。テスト照射から始めて、効果が認められる場合は継続します。Vビームレーザーより深達性(より皮膚の深くまで効果がある。)がありますが、そのために、瘢痕(きずあと)を生じる可能性も高いので、注意が必要です。
*詳細は、トピックス「Vビーム抵抗性血管性疾患 ロングパルス YAG レーザーによる治療」を、ご参照ください。
- ■主に使用するレーザー装置
- 「ロングパルス YAG レーザー」キャンデラ GentleMax Pro Plus
- ■平均的な治療回数
- 必要により、治療継続します。
- ■治療間隔
- 3ヵ月ごと
- ■治療料金
- 治療料金一覧へのリンク
網目状静脈瘤・クモの巣状静脈瘤
あみめじょう、くものすじょうじょうみゃくりゅう
網目状静脈瘤
クモの巣状静脈瘤
「下肢静脈瘤」に伴う「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」は、ロングパルスYAG レーザーによる治療が可能です。
青色や赤色の細かい「網目状」、「クモの巣状」の血管が皮膚に透見されるものを、「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」といいます。
「下肢静脈瘤」に伴わず、単独で生じる場合もあります。
「下肢静脈瘤」の太い血管の治療は、血管内レーザー焼灼術が行われるようになり、身体的負担が少なくなりました。
ただし、血管内レーザー焼灼術では、皮膚表面の細かい「網目状」、「クモの巣状静脈瘤」を治療することができません。
「網目状」、「クモの巣状静脈瘤」は、ロングパルスYAG レーザーの皮膚照射による治療が可能です。
「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」には、硬化療法を行うこともありますが、痛みが強く、傷あとや色素沈着を残すことがあります。また、細かい血管は対応できません。
レーザー治療は、硬化療法で必要であった治療後の圧迫も必要ありません。
「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」は、ふくらはぎなど目立つ場所にできることが多いため、きれいに治療することが重要です。
きれいに治療するために、ロングパルスYAGレーザーによる治療をお勧めします。
皮膚の外から照射する皮膚照射レーザー治療で、短い時間で治療可能です。
体への負担が少ない治療法です。日帰りの治療が可能です。
「下肢静脈瘤(伏在型静脈瘤)」と「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」
下肢の静脈がコブ状に膨らんだ状態を「下肢静脈瘤(伏在型静脈瘤)」といいます。
下肢の静脈には、弁があり、血液の逆流を防いで、血液を心臓に戻しています。
弁が壊れて機能不全を起こすと、血液が静脈内に留まり、コブ状になり、血液の循環ができなくなり、多くの症状を引き起こします。
足のむくみ、だるさ、重さを生じます。
血管が浮いて見えます。
進行すると、太い血管が、蛇行してコブ状になります。
色素沈着や皮膚炎を生じ、皮膚の硬化、ただれとなり、潰瘍を形成することもあり、治療が難しくなります。
「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」は、「下肢静脈瘤」に伴って出現することがあります。
青色や赤色の細かい「網目状」、「クモの巣状」の血管が皮膚に透見されるものを、「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」と言います。
「下肢静脈瘤」に伴わず、単独で生じる場合もあります。
ホルモンの関与による毛細血管の拡張が原因で、加齢に伴う、静脈壁や周囲支持組織の変化も関与します。
「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」は、単独では症状はありません。
症状がない場合は、放置しても構いません。
整容的に気になる場合は、レーザーで治療できます。
症状を認める場合は、「下肢静脈瘤」を伴っている場合があり、検査が必要です。
「下肢静脈瘤」の治療が必要になる場合もあります。
キャンデラ GentleMax Pro Plus
キャンデラ社のロングパルス YAG レーザーです。
医療脱毛、色素性疾患用のレーザー装置ですが、血管性疾患にも効果があります。
血管性疾患に対しては、血管性疾患専用の「スペシャルティ ハンドピース」を装着して照射します。
ロングパルス YAG レーザーは、深達性(皮膚の深くまで効果がある。)があり、比較的太い血管にも反応します。
「網目状静脈瘤」、「クモの巣状静脈瘤」に、効果を認めます。
皮膚の表面を保護する冷却ガスを噴射する装置が付加されています。
DCD(Dynamic Cooling Device)というシステムで、照射する部位を冷却し、合併症の熱傷を予防します。
*トピックス「GentleMax Pro Plus 脱毛・色素疾患・血管用レーザー」」も、ご参照ください。
- ■主に使用するレーザー装置
- 「ロングパルス YAG レーザー」キャンデラ GentleMax Pro Plus
- ■平均的な治療回数
- 必要により、治療継続します。
- ■治療間隔
- 2~3ヵ月ごと
- ■治療料金
- 治療料金一覧へのリンク
静脈湖(Venous Lake)
じょうみゃくこ
静脈湖は、主に口唇(とくに下口唇)に生じる1~10mm程度のやや隆起のある暗赤色から紫色に見える小隆起です。
紫外線による影響、外傷、加齢性変化などが原因と考えられ、静脈が拡張して生じます。
圧迫すると平坦になるのが特徴です。
口唇以外に、顔、首、耳介など直射日光に当たる部位、口腔内にできることもあります。
高齢者、特に女性に多く見られます。
通常症状はありませんが、出血や痛みを伴うことがあります。
経過をみていると少しずつ大きくなることがあります。
レーザー治療により、改善することができます。
ロングパルスYAGレーザーによる治療
血管系に反応するレーザーにはロングパルスYAGレーザーとVビームレーザー(色素レーザー)があります。
静脈湖に関しては、ロングパルスYAGレーザーが、第1選択となります。
Vビームレーザー(色素レーザー)の方が、血管への選択的な吸収性は高いのですが、皮膚の深部に届かないという欠点があります。
ロングパルスYAGレーザーの方が、皮膚の深部に届き、太い血管にも作用します。
CO2(炭酸ガス)レーザーによる焼灼(蒸散)治療もありますが、ロングパルスYAGレーザーの方が、傷あとが残りにくい治療が可能です。
治療直後は、痂皮(かさぶた)の形成やジクジクを認めることがありますが、回復すると、多くの場合、傷あとを残さずに治癒します。
通常は、テープの貼る麻酔で行いますが、痛みの苦手な方には、注射の局所麻酔をすることもできます。
短い治療時間で治療可能です。
通常、1回の治療で治癒します。まれに、2~3回の治療を行う必要があります。