診療内容
保険取扱疾患 色素性疾患
太田母斑(青あざ)
太田母斑と異所性蒙古斑
青あざには、太田母斑の他に、「異所性蒙古斑」があります。
「蒙古斑」は、日本人を含む蒙古人種にあるお尻の青あざです。
同様のものが、お尻以外にできたものを、「異所性蒙古斑」と言います。
「異所性蒙古斑」は、成長とともに色が薄くなりますが、「太田母斑」は、色が薄くなることはありません。逆に、思春期頃より、色が濃くなることがあります。
治療が必要となるあざですが、レーザー治療が著効するあざです。
診断
部位と色調から診断します。
典型的な太田母斑は、額から頬部に生じ、青紫色から灰紫青色です。
薄い褐色の色素斑が混ざる場合があります。
褐色が目立つと、扁平母斑(茶あざ)、雀卵斑(そばかす)、中年以降の老人性色素斑(シミ)と誤診されることがあります。
扁平母斑は、色調が一様な褐色斑です。黒色の小斑点が混じることがあります。
雀卵斑は、小さな褐色斑を左右対称に多数認めます。
老人性色素斑も褐色で、青色が混じることはありません。
シミと思っていても、褐色斑に青色を混じている場合は、太田母斑の可能性があります。
目の下のくまと言われているものも、太田母斑の可能性があります。
白眼のところに青色の色素斑が存在すると、出生時に顔に色素斑が存在しなくても、ほとんどの症例が思春期までに顔に青あざを生じ、拡大します。
経過
生まれつき、または、生まれて間もなくできる場合(早発型)と、思春期以降になってから出現する場合(遅発型)があります。
乳児期から濃くなっていくものがあります。
思春期から濃くなる場合もあります。
思春期に範囲が拡大することもあります。
自然に消退することはありません。
小さいときに、レーザー治療を行い、きれいになっている場合でも、思春期になり、再び色が出てくる場合があります。
治療した部位に色が出てくる場合と、治療していない周囲に色が出てくる場合があります。
治療
レーザー治療が著効するあざです。
昔は、ドライアイス療法や植皮を行っていたことがありました。
Qスイッチレーザーが開発され、レーザーによる治療が可能になりました。
Qスイッチレーザー(Qスイッチルビーレーザーなど)は、10-9秒単位の短い照射時間に、高いピーク出力のレーザーを照射するもので、少ない合併症で、皮膚の深部の太田母斑の色素を破壊することができます。
さらに、最近では、照射時間をさらに短くし、10-12秒単位の照射時間で照射するビコ秒レーザー(ピコ秒YAGレーザーなど)が開発されており、より合併症の少ない治療が可能になりました。
3か月間隔で、小児の場合、4〜5回くらい、成人の場合、やや回数が多く、5回程度の治療が必要です。
年齢が低いほど、効果が高く、合併症の少ない治療が可能です。
小さい時ほど皮膚の厚みが薄く、皮膚の深い部分までレーザーが到達しやすいのと、乳児期は、皮膚の肌色の色素が未発達で白いため、合併症が少ないためです。
思春期以降に、色が濃くなったり、範囲が拡がることがありますが、再度、治療すれば、再び、あざのない状態にすることができます。
合併症
水疱形成、色素沈着、色素脱失を生じることがあります。
皮膚色が濃いと、色素沈着、色素脱失を生じる可能性が高くなります。
元々皮膚色が濃い場合はやむを得ませんが、日焼けはしないようにし、日焼けをしていない状態で治療します。
レーザー照射後に反応性の炎症後色素沈着を生じる場合があります。
通常は、一時的で、3ヵ月くらいで改善しますが、経過が長い場合があります。
色素沈着が残っている場合は、次の治療をせず、間隔を開けて、色素沈着が改善してから治療を行います。
レーザー照射部位は照射前後に日焼けしないように心掛けます。
レーザー照射前に日焼けしているとレーザー治療の効果が減弱し、合併症の可能性が高くなります。
レーザー照射後に日焼けすると、炎症後色素沈着が濃く、遷延することがあります。
レーザー装置
照射時間による分類で、Qスイッチレーザー(照射時間:10-9秒単位)、ピコ秒レーザー(照射時間:10-12秒単位)の2つがあります。
レーザーの種類により、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーの3つがあります。
代表的な、機種は、以前は、Qスイッチルビーレーザー、現在は、ピコ秒YAGレーザーです。
いずれの機種も健康保険の適応があり、健康保険での治療可能です。
乳幼児医療、小児医療等の適応も可能で、負担額0割の場合は、治療費の負担はありません。
保険治療回数
ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーの3種類のレーザーに保険適応があります。
このうち、ルビーレーザーにのみ、照射回数の制限があり、太田母斑は、5回までとなっています。
残りの2種類、アレキサンドライトレーザー、YAGレーザーには、治療回数の制限はありません。5回を超えての保険治療が可能です。
保険適応は、従来のQスイッチレーザーに加えて、ピコ秒レーザーも健康保険の適応となっています。
眼球(白目)の色素斑
太田母斑では、白目(眼球の強膜)にも色素斑を認める場合があります。
以前は、白目の色素斑は治療できないとされていました。
院長 小林正弘は、眼球上の色素斑の治療の開発に取り組み、世界で初めて学会で報告しました。
現在、当院での治療は行っていませんが、治療可能な施設をご紹介することは可能です。
ご来院の上、ご相談ください。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)
太田母斑と同様の青色の色素斑が、両側の頬部から前額にかけて生じることがあります。
多くは、20歳~30歳頃から出現します。
ADM(後天性真皮メラノサイトーシス)と呼ばれています。
太田母斑と同様に、皮膚の深い部分(真皮)に色素細胞が見られます。
好発部位は、両側頬上部の外側、目の下のクマの部位です。
女性に多く認めます。
原因は不明です。
考え方が分かれていて、太田母斑と同じ疾患の1つとして、「両側性太田母斑」と呼ぶ場合と、太田母斑とは別の疾患として、「遅発性太田母斑“様”色素斑」と呼ぶ場合があります。
レーザー治療が効果的で、太田母斑と同様の治療で改善させることができます。
扁平母斑(茶あざ)、雀卵斑(そばかす)、肝斑、老人性色素斑(シミ)と鑑別する必要があります。
正しい治療をすればADMは著効しますが、上記と誤認して治療すると治癒しません。
扁平母斑は、出生時、思春期より認めます。
色調が一様な褐色斑(明るい茶色)です。黒色の小斑点が混じることがあります。
雀卵斑は、幼少期より認めます。
小さな褐色斑を左右対称に多数認めます。
肝斑、老人性色素斑は、20歳後半頃より認めます。
年齢的は同時期ですが、色調は、褐色で、青色が混じることはありません。
伊藤母斑
肩の周りに太田母斑と同様の青色の色素斑を認める場合があります。
伊藤母斑と呼ばれます。
太田母斑に類似した状態ですが、生じる場所が異なり、主に肩から肩甲骨周辺に生じます。
これも、自然に消えることはありません。
レーザー治療が効果的で、太田母斑と同様の治療を行います。
- ■主に使用するレーザー装置
- 「ピコ秒レーザー」キャンデラ PicoWay(保険適応があります。)
- ■平均的な治療回数
- 5回程度
- ■治療間隔
- 3ヵ月ごと
- ■治療料金
- 治療料金一覧へのリンク